理事長挨拶

欧州では、15年以上前から国もしくは国をこえた欧州レベルで脊椎脊髄手術症例データベースの運用が始まっており、 医療の質の向上に貢献しております。 残念ながら我が国では、 国レベルの脊椎脊髄手術症例データベースはこれまで存在していませんでした。

2020年4月より、公益社団法人日本整形外科学会(JOA)が、整形外科手術症例レジストリーシステムJOANRを構築し、運用が開始されました。現状では脊椎脊髄手術の大半をJOA会員である整形外科の脊椎脊髄病医が執刀しているため、脊椎脊髄手術の多くは既にJOANRに登録されています。JOANRでは、脊椎脊髄手術の年齢・性別・病名・手術術式・手術時間・術者・助手, 30日の臨床転帰といった簡易項目のみの登録となっており、手術の詳細な情報(手術方法や、使用脊椎インプラント情報、手術合併症情報)は登録項目に含まれておりません。そこで今回、日本脊椎脊髄病学会が主体となり、上記のJOANRレジストリーシステムに連結した脊椎脊髄手術関連の詳細な症例データベースシステムを構築し、運用する運びとなりました。

このデータベースに登録された臨床現場の医療情報を体系的に把握し、脊椎・脊髄疾患の医療の質向上に資する分析を行うことで、国民の皆様への最善の医療の提供、適正な医療水準の維持、医療経済の最適化に大きな効果をもたらすことが期待されます。本データベースは今後本学会の核となるプロジェクトであり、今後も継続することにより我が国の脊椎脊髄手術の基盤となるエビデンスを構築していきたいと思います。日本脊椎脊髄病学会レジストリー(JSSR-DB)へのご参加を是非お願いしたいと思います。会員の皆様方のご協力を、よろしくお願い申し上げます。

日本脊椎脊髄病学会 理事長(2020-2022) 松山幸弘